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持続可能な食文化へ/北海商科大学 池ノ上真一教授 インタビュー下


流通システムの再構築を


北海商科大池ノ上教授

―北海道の食文化の課題は。


 生産者・流通・消費者をつなぐ仕組みの弱さが最大の課題です。


 小規模生産者は、良いものを作っても適正価格で売る場が少なく、利益を確保しにくい現実があります。


 また、大規模業者に依存しがちな業界であるため、狭い地域内での流通がうまく機能していないと感じることもあります。


 今後、小規模生産者はオンライン・オフライン両面での発信力向上が必須です。地域は官民一体となって価値を伝える仕組みをつくり、生産者を支えていくことが求められています。


食材の「ストーリー」「哲学」を伝える


―地元企業が貢献できることは。


 地域商社は単なる販売機関にとどまらず、食材のストーリーや哲学を伝えることにも力を注いでほしいと願います。

 単に食材を売るだけはなく、その野菜がどのように育てられ、味にどんな特徴があり、どういった料理に適しているのか。その説明こそが高い付加価値を生み、多くの人を惹きつけるでしょう。


 DMO(観光地域づくり法人)との連携で、地域ブランド全体の統一感を図ることも重要です。

 適切なブランディングは、受け手により洗練された印象を与えます。ハイクオリティな食文化の提供は、地域内はもとより、国内外への販路拡大にも資するでしょう。


消費者も地域の発信者に


―消費者ができることは。


 地元の人たちにこそ「なぜこの食材を選ぶのか」「背景はにどんな物語があるのか」を理解し、伝える役割を担ってもらいたいです。


 スーパーで売られる商品と、地元の直売所で売られるものの違いが浸透すれば、商品を単なる食べ物ではなく、文化的価値のあるものとして認識してもらえます。

 SNSや観光イベントなどを通じた、丁寧でこまめな情報発信が不可欠です。


気候変動で名産物が変わる


―気候変動と食文化について。


 北海道で採れる農水産物は今、変わりつつあります。


 例えば、サケの漁獲量が減少し、代わりにブリ・カツオなどの漁獲が増えている。こうした変化に適応して、新たな食文化を生み出すことが求められます。

 他地域から調理法を学んだり、ブランディングのヒントを得られれば、新しい北海道の食文化を創造できるのではないでしょうか。


―地域コミュニティの役割は。


 生産者や料理人、観光事業者、研究機関、行政などの連携による仕組みづくりが肝になります。地域全体で食文化の洗練・向上を目指す在り方が理想的です。


地域全体の「当事者意識」がブランド力になる


― 未来への期待は?


 北海道の農水産物は、どれも高品質であると知られています。それは大きな強みです。今後はそれぞれの食材に宿る文化的背景を伝え、常に洗練させ続けることがカギになります。それが北海道の食文化を世界に誇れる文化資産へと育てる道だと思います。


 地域の皆が当事者意識を持って食文化を成長させ、新たな価値を生み出せれば「北海道ブランド」を世界的なレベルに押し上げることができるのではないでしょうか。


北海商科大学商学部観光産業学科 教授 池ノ上 真一 (いけのうえ しんいち) プロフィールはこちらから



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